予防歯科

病気になる前に守る

病気になる前に守る

予防歯科とは、虫歯や歯周病などの病気になる前に、口の中の健康を維持するための取り組みです。現在、世界の歯科医療では「病気を治す」ことよりも「病気を予防する」ことが重視されています。

その理由は明確です。一度削った歯は二度と元に戻りません。治療を繰り返すたびに歯は弱くなり、最終的には歯を失うリスクが高まります。しかし、適切な予防を行えば、虫歯や歯周病の多くは防ぐことができるのです。

当院では、患者様が生涯にわたって自分の歯で食事を楽しみ、健康な生活を送れるよう、予防歯科に力を入れています。

予防歯科のメリット

予防歯科のメリット

予防歯科には、治療中心の歯科医療にはない多くの利点があります。

  1. 痛みのないケア痛みのないケアが最大のメリットです。予防歯科の処置は、基本的に痛みを伴いません。虫歯になって歯を削る必要が出る前に対処するため、麻酔も不要です。歯科治療の痛みが苦手な人にとって、予防は特に価値があります。
  2. 歯の寿命が延びる歯の寿命が延びることも重要なポイントです。日本人の平均寿命は80歳を超えていますが、歯の寿命は平均で60歳前後といわれています。つまり、多くの人は人生の後半を入れ歯やインプラントで過ごすことになります。しかし、定期的な予防ケアを受けている人は、80歳で20本以上の歯を残している割合が高いというデータがあります。
  3. 時間と費用の節約時間と費用の節約という経済的なメリットもあります。一見すると、何も問題がないのに歯科医院に通うのは無駄に思えるかもしれません。しかし、虫歯や歯周病になってから治療を受けると、通院回数が増え、治療費も高額になります。予防にかかる費用は、治療費と比べてはるかに少なく済みます。
  4. 全身の健康維持全身の健康維持にもつながります。口の中の細菌は、血液を通じて全身に影響を与えることがわかっています。歯周病が糖尿病や心臓病、脳梗塞などのリスクを高めることは、これまで説明してきた通りです。口の健康を守ることは、全身の健康を守ることでもあるのです。
  5. 口臭予防口臭予防の効果も見逃せません。口臭の多くは、口の中の細菌が原因です。定期的なクリーニングで細菌を減らすことで、口臭を防ぐことができます。

セルフケアと
プロフェッショナルケア

予防歯科は、自宅で行う「セルフケア」と、歯科医院で受ける「プロフェッショナルケア」の両方が必要です。

毎日のセルフケア

予防の基本は、毎日の歯磨きです。食後は口の中が酸性になり、歯が溶けやすい状態になります。できるだけ早く歯磨きをすることで、酸を中和し、細菌の増殖を抑えることができます。

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは60%程度しか落とせないといわれています。デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、90%以上の汚れを除去できます。特に就寝前の歯磨きは、丁寧に時間をかけて行うことが大切です。

フッ素配合の歯磨き粉を使うことも効果的です。フッ素は歯の表面のエナメル質を強化し、虫歯菌が作る酸に対する抵抗力を高めます。

毎日のセルフケア

歯科医院でのプロフェッショナルケア

どんなに丁寧に歯磨きをしても、完全に汚れを取り除くことは難しいものです。特に「バイオフィルム」と呼ばれる細菌の膜は、歯の表面に強固にこびりついており、歯ブラシだけでは除去できません。バイオフィルムは、台所の排水口のヌメリと同じようなもので、細菌が集まって形成した膜です。

バイオフィルムの除去

歯科医院では、専用の器具を使ってこのバイオフィルムを除去します。これを「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning:専門的機械的歯面清掃)」といいます。

PMTCでは、専用のペーストと回転ブラシやゴムのチップを使い、歯の表面を磨き上げます。処置後は歯がツルツルになり、細菌が付着しにくい状態になります。

バイオフィルムの除去

歯石の除去

歯石の除去も重要です。歯石は歯垢が石灰化して硬くなったもので、歯ブラシでは取れません。

歯石の表面はザラザラしているため、細菌が付着しやすく、歯周病を悪化させる原因になります。歯科医院では超音波スケーラーなどの専用器具を使って、歯石を丁寧に除去します。

歯石の除去

フッ素塗布による歯質強化

歯科医院では、家庭用よりも高濃度のフッ素を塗布できます。高濃度フッ素は、歯の表面のエナメル質と化学反応を起こし、「フルオロアパタイト」という酸に強い結晶構造に変えます。これにより、虫歯になりにくい歯を作ることができます。

特に、生えたばかりの永久歯はエナメル質が未成熟で虫歯になりやすいため、フッ素塗布が効果的です。また、歯茎が下がって歯根が露出している部分も、フッ素による保護が有効です。

フッ素塗布による歯質強化

歯周病チェックと早期発見

予防歯科では、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)の深さを測定します。健康な歯茎では2〜3mm程度ですが、歯周病が進行すると4mm以上になります。定期的にチェックすることで、歯周病の進行度を把握し、早期に対処することができます。

また、歯茎からの出血や腫れ、歯のぐらつきなどもチェックします。これらの症状は歯周病のサインであり、早期に発見できれば、簡単な治療で改善できることが多いのです。

歯周病チェックと早期発見

正しい歯磨き指導

「毎日歯を磨いているのに虫歯になる」という人は、磨き方に問題がある可能性が高いです。歯科衛生士が、一人ひとりの口の状態に合わせて、適切な歯磨き方法を指導します。

歯ブラシの当て方、動かし方、磨く順序、力加減など、細かいポイントを実際に見せながら教えてもらえます。また、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方も指導を受けることで、より効果的なセルフケアができるようになります。

正しい歯磨き指導

定期検診の重要性

定期検診の重要性

予防歯科の効果を最大限に引き出すには、定期的な検診が欠かせません。一般的には3〜6ヶ月に一度の受診が推奨されています。

虫歯や歯周病のリスクが高い人、すでに治療した歯が多い人、歯並びが悪い人などは、3ヶ月ごとの検診が適しています。一方、口の中の状態が良好で、セルフケアがしっかりできている人は、6ヶ月ごとでも十分なケースがあります。

定期検診では、視診やレントゲン撮影によって、目に見えない部分の虫歯や、歯茎の下の歯石なども発見できます。早期発見できれば、治療も簡単で済みます。

よくある質問

予防歯科は保険が適用されますか?
A.はい、定期検診や歯石除去、フッ素塗布(13歳未満の子ども)などは保険が適用されます。
ただし、保険診療では回数や内容に制限がある場合があります。より徹底したクリーニングや、高濃度フッ素塗布を希望する場合は、自費診療となることもあります。費用については、受診前に歯科医院に確認することをおすすめします。
定期検診はどのくらいの頻度で受ければいいですか?
A.一般的には3〜6ヶ月に一度が推奨されています。
ただし、口の中の状態によって最適な頻度は異なります。虫歯になりやすい人、歯周病のリスクが高い人、矯正治療中の人などは、3ヶ月ごとの検診が適しています。担当の歯科医師や歯科衛生士と相談して、自分に合った頻度を決めましょう。
痛みがなくても歯科医院に行く必要がありますか?
A.はい、とても重要です。虫歯や歯周病は初期段階では痛みがほとんどありません。
痛みが出たときには、既にかなり進行している可能性が高いのです。定期的に通院することで、問題を早期に発見し、簡単な処置で対応できます。「痛くなってから行く」のではなく、「痛くならないように行く」という考え方が大切です。
子どもも予防歯科を受けたほうがいいですか?
A.はい、特に子どもこそ予防歯科が重要です。
乳歯は永久歯よりも虫歯になりやすく、進行も速いため、定期的なチェックが必要です。また、生えたばかりの永久歯はエナメル質が未成熟で虫歯になりやすいため、フッ素塗布やシーラント(奥歯の溝を埋める予防処置)が効果的です。子どもの頃から定期検診の習慣をつけることで、大人になってからも健康な歯を保ちやすくなります。
歯石取りは痛いですか?
A.歯茎が健康な状態であれば、ほとんど痛みを感じません。
ただし、歯周病が進行して歯茎に炎症がある場合や、歯茎の下の深い部分の歯石を取る場合は、痛みを感じることがあります。その場合は、麻酔を使って痛みを和らげることもできます。また、定期的に歯石取りをしていれば、歯石が大量に溜まることがなく、処置も楽になります。