小児歯科

子どもの歯を守ることの大切さ

子どもの歯を守ることの大切さ

小児歯科は、お子様の健やかな成長を支えるために、乳歯が生える前から永久歯が生え揃うまでの期間を対象とした歯科診療です。

「どうせ生え変わるから」と乳歯を軽視してはいけません。乳歯には、食べ物を噛むという基本的な役割に加えて、顎の成長を促したり、永久歯が正しい位置に生えるためのガイド役を果たしたり、発音の練習をサポートしたりと、実はとても重要な役割があるのです。

乳歯が健康であることは、お子様の全身の成長と発達に直結していますので、小さい頃からの適切なケアが欠かせません。

乳歯の特徴と虫歯のリスク

乳歯は永久歯と比べてエナメル質や象牙質が薄く、柔らかいという特徴があり、これが虫歯になりやすい大きな理由となっています。永久歯のエナメル質の厚さが約2mmあるのに対して、乳歯は約1mmしかないため、一度虫歯ができると進行が非常に速く、あっという間に神経まで達してしまうことも珍しくありません。

また、小さなお子様は痛みをうまく伝えられないことが多く、気づいたときには既に虫歯がかなり進行していたというケースもよくあります。

乳歯の虫歯を放置してしまうと、その下で成長している永久歯の質が悪くなったり、永久歯が変色したり変形したりする原因になります。さらに乳歯を早期に失ってしまうと、永久歯が生えるスペースが不足して歯並びが悪くなることもあるため、乳歯であってもしっかりと治療と予防を行うことが大切なのです。

年齢別の歯科ケア

年齢別の歯科ケア
  1. 0〜3歳:乳歯が生え始める時期 生後6ヶ月頃から乳歯が生え始めますが、この時期から歯磨きの習慣をつけることが重要です。最初は柔らかいガーゼで歯を拭くことから始めて、徐々に乳児用の歯ブラシに慣れさせていきましょう。
    1歳6ヶ月頃には前歯が生え揃い、2歳頃には奥歯(第一乳臼歯)が生えてきますので、この頃から虫歯のリスクが高まります。保護者の方による仕上げ磨きは必須で、特に寝る前の歯磨きを丁寧に行うことが虫歯予防につながります。
  2. 3〜6歳:乳歯が生え揃う時期 3歳頃までに乳歯20本がすべて生え揃います。この時期はおやつの与え方がとても重要になってきて、甘いお菓子やジュースを頻繁に摂取すると虫歯のリスクが大幅に上がってしまいます。
    また奥歯の溝が深く複雑な形をしているため、食べかすが溜まりやすく、虫歯ができやすい場所となっています。定期的な歯科検診を受けて、フッ素塗布やシーラント(奥歯の溝を埋める予防処置)などの予防処置を受けることをおすすめします。
  3. 6〜12歳:永久歯への生え変わり時期 6歳頃から永久歯への生え変わりが始まり、”6歳臼歯(第一大臼歯)”という重要な永久歯が奥歯の一番後ろに生えてきます。この歯は乳歯が抜けて生えるのではなく、新たに生えてくるため、保護者の方も気づかないことが多いのですが、実は一生使う歯の中で最も重要な歯の一つです。
    生えたばかりの永久歯はエナメル質が未成熟で虫歯になりやすいため、この時期のフッ素塗布は特に効果的といえます。

虫歯予防の具体的な方法

フッ素塗布による歯質強化

フッ素は歯の表面を強化して虫歯になりにくくする効果があり、定期的に歯科医院で高濃度フッ素を塗布することで、虫歯の発生率を大幅に減らすことができます。

特に生えたばかりの乳歯や永久歯に塗布すると効果が高く、3〜6ヶ月に一度の頻度で塗布することが推奨されています。フッ素塗布は痛みもなく短時間で終わる処置ですので、お子様の負担も少なく安心です。

フッ素塗布による歯質強化

シーラントで奥歯を守る

奥歯の噛む面には深い溝があり、歯ブラシの毛先が届きにくいため虫歯ができやすくなっています。

シーラントは、この溝を歯科用の樹脂で埋める予防処置で、溝に食べかすが入り込むのを防ぐことができます。痛みはまったくなく、歯を削ることもないため、お子様でも安心して受けられます。特に6歳臼歯や乳歯の奥歯に行うと効果的です。

シーラントで奥歯を守る

正しい歯磨き習慣の確立

お子様自身で歯磨きができるようになっても、小学校低学年のうちは保護者の方による仕上げ磨きが必要です。

お子様の磨き方では磨き残しが多く、特に歯と歯の間や奥歯の裏側などは磨けていないことがほとんどです。また歯磨き粉についても、フッ素配合のものを年齢に応じた適量使用することで、虫歯予防効果が高まります。

正しい歯磨き習慣の確立

食生活とおやつの与え方

食生活とおやつの与え方

おやつは子どもの楽しみの一つですが、与え方次第で虫歯のリスクが大きく変わります。虫歯予防の観点から大切なのは、糖分をなるべく控えることと、お口の中に糖分が残る時間を短くすることです。

望ましいおやつとしては、野菜スティックや果物、腹持ちの良いおにぎりなどが挙げられます。また昆布や煮干し、スルメなどはしっかり噛むことで唾液の分泌を促すため、歯にとって良いおやつといえます。甘いものを与える場合は、キャラメルやグミのように口の中に長く残るものより、アイスクリームのようにすぐに溶けるものを選ぶ方がよいでしょう。

おやつを与えるタイミングも重要で、決まった時間にサッと食べられる量を与えることが理想的です。ダラダラと長時間食べ続けたり、一日に何度もおやつを与えたりすると、口の中が常に酸性の状態になってしまい、虫歯ができやすくなります。

おやつを食べた後は、できるだけ歯磨きをするか、少なくとも水やお茶を飲んで口の中をすすぐようにしましょう。

定期検診の重要性

定期検診の重要性

お子様の歯は成長とともに変化していきますので、3〜6ヶ月に一度の定期検診を受けることをおすすめします。

定期検診では、虫歯の早期発見だけでなく、歯磨き指導やフッ素塗布、歯並びのチェックなども行います。もし3歳児検診や就学時検診で歯にトラブルが見つかった場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。

また定期的に歯科医院に通うことで、お子様が歯医者さんに慣れて、歯科治療への恐怖心を持ちにくくなるという利点もあります。痛くなってから初めて歯医者さんに行くと、どうしても「歯医者=怖いところ」というイメージがついてしまいますが、予防で定期的に通っていれば、歯医者さんを身近に感じられるようになります。

よくある質問

乳歯の虫歯は永久歯に影響しますか?
A.はい、大きく影響します。
乳歯の虫歯を放置すると、その下で育っている永久歯の質が悪くなったり、変色や変形が起こったりすることがあります。また乳歯を早期に失うと、永久歯が生えるスペースが不足して歯並びが悪くなる原因にもなりますので、乳歯であってもしっかり治療することが大切です。
フッ素塗布は何歳から始めればいいですか?
A.歯が生え始めたら、すぐに始めることができます。
生後6ヶ月頃から乳歯が生え始めますので、その頃から歯科医院でフッ素塗布を受けることが可能です。特に生えたばかりの歯はエナメル質が未成熟で虫歯になりやすいため、早い時期からのフッ素塗布が効果的です。
仕上げ磨きは何歳まで必要ですか?
A.一般的には小学校低学年(7〜8歳頃)までは必要とされています。
お子様が自分で磨けるようになっても、細かい部分まで丁寧に磨くことは難しいため、保護者の方がチェックして磨き残しを仕上げてあげることが大切です。お子様の成長に合わせて、徐々に自分で完璧に磨けるようサポートしていきましょう。
指しゃぶりは歯並びに影響しますか?
A.3歳以降も指しゃぶりが続くと、歯並びや噛み合わせに影響が出る可能性があります。
特に前歯が前に出る(出っ歯)や、上下の前歯が噛み合わない(開咬)といった問題が起こりやすくなります。3歳頃までに自然にやめられれば問題ありませんが、それ以降も続く場合は、優しく声をかけたり、手を使う遊びを増やしたりして、少しずつやめられるようサポートしてあげましょう。
子どもが歯医者を怖がるのですが、どうすればいいですか?
A.お子様が歯医者を怖がるのは自然なことです。まずは痛くないうちから定期検診で通い始めることで、歯医者さんに慣れることができます。
また治療の前に「頑張ったらご褒美」などのポジティブな声かけをして、終わった後はたくさん褒めてあげることが大切です。逆に「痛くないよ」「怖くないよ」という言葉は、かえってお子様に不安を与えてしまうことがありますので、「先生が優しく見てくれるよ」など前向きな表現を使うとよいでしょう。